みなさんはデジタルツインという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
デジタルツインとは、直訳すると「デジタルの双子」となりますが、IoTなどのテクノロジーを活用して現実の生産設備などをデジタル上に再現したものとなります。
本記事では、そのようなデジタルツインについて、デジタルツインとは?から、製造業における導入のメリット、活用方法、製造業での導入事例までを解説します。
先述のようにデジタルツインとは、IoTなどのテクノロジーを活用して現実の生産設備などをデジタル上に再現したものならびにその技術です。特徴はIoTなどの最先端のテクノロジーを活用して、現実に生産現場などで起きているリアルタイムの状況を現場にいるかのように詳細に把握できることです。
そして、デジタルツインが注目を浴びるようになったのも、最先端テクノロジーやコンピュータの演算速度が向上し、その概念が現実のものにできるようになったことにあります。
また、デジタルツインの市場も成長が予測されており、Markets and Markets社※によると、2026年までに482億ドル相当の市場規模(日本円にて約5兆5000億円)になると予測されています。
では、デジタルツインはどのような活用方法が検討されているのでしょうか?
産業でのデジタルツイン活用が今後もますます拡大すると予想されますが、デジタルツインへの期待は使う人(ユーザー)によって様々です。
製造業におけるデジタルツインの活用方法は主に2種類あり、シミュレーションに活用することとオペレーションへ活用することです。
シミュレーションへのデジタルツイン活用は、主に機械学習などの技術と組み合わせて利用されています。機械学習などのモデルを用いて、デジタル上に再現された生産現場や設備の状態について実際に生産などを行う前に予測やテストを行います。
CAE(Computer Aided Engineering)やDMU(Digital Mock-Up)など、デジタル空間でシミュレーションを⾏う従来から存在している概念もこちらに含まれます。
また、位置情報などを兼ね備えた点群データなどと組み合わせて用いることで、災害時の被害を想定したり、工事現場の測量などを簡略化したりといった活用もシミュレーションへの活用となります。
オペレーションへの活用はIoT技術やコンピュータの演算技術の向上によって可能となりました。実際のセンサーデータなどをコンピューター上で再現された工場などで確認を行い、工場の遠隔監視や保全計画の遠隔での策定などを実現します。
また、デジタルツインを携帯端末上などで確認可能にすることで、生産現場の作業員が問題が発生している設備の箇所を把握しやすくなったり、遠隔の指示に従って業務の遂行や報告を随時行えるようになったりする点も、オペレーションへのデジタルツインの活用と言うことができるでしょう。
デジタルツインを活用することで得ることが出来るメリットは数多くあります。ここでは、製造業におけるメリットについて、3点に絞って解説します。
生産現場の業務はリモートワークが実現できないとお考えの方も多いのではないでしょうか?しかし、デジタルツインを導入すれば、遠隔での設備監視などが可能となります。
また、万一アラートなどが発生した際も、現場の作業員への指示出しなどを遠隔から行うことができ、移動時間の削減や、過去から積み重ねたノウハウをデジタルツイン上に蓄積・確認できるようにすることで技術の伝承といった副次的な効果も得ることが出来るようになります。
現場の作業ももちろんデジタルツインによって恩恵を受けることができます。作業指示書や作業対象の設備のデータ、その位置などを携帯端末から確認できることによって、経験の少ない作業員でも迅速に業務を行うことができます。
作業員が取得したデータは、携帯端末からすぐさまデジタルツインの元となるデータに反映されます。さらに、遠隔地にいる熟練した技術者と同じデータを元に疑問点などもすぐにコミュニケーションが行うことができるようになります。
デジタルツインはセンサーデータや現場の報告データとの組み合わせは欠くことはできません。これらがリアルタイムで設備と紐づけられて確認できるようになり、軽微なエラーや故障あらゆる事象をデジタルツイン上で迅速に確認可能になり、リアルタイムに対策が検討可能となります。また、それらのデータと機械学習を組み合わせて、デジタルツイン上でアラートを出すなどの仕組みを整えることで予兆保全を行うことが可能となります。
その結果、スマート保安が目指す保全コストの削減や予期せぬダウンタイムの削減といった定量的な効果と熟練した技術者が培ってきたノウハウの蓄積といった定性的な効果を得ることができるようになります。
スマート保安について知りたい方はこちら:スマート保安とは?
では、製造業においてデジタルツインを作成するためにはどのようなものが必要なのでしょうか?
デジタルツインの作成には3つのものが最低限必要です。
これは、デジタルツインの元となる仮想空間に現時点の製造現場の状況を反映するために必要なデータとなります。
3Dデータがない場合は、点群データや写真の画像データを取得して最新の状況を反映した3Dデータを作成します。もちろん、建設時に作成した3D CADのデータなどを活用することも可能です。
また、機器の入れ替えなどに合わせて、更新を適宜行っていく必要があります。
点群データについて知りたい方はこちら:今さら聞けない点群データとは? - 製造業での活用事例も紹介!
これは、IoT技術などによって取得されている現在から過去までの製造現場のセンサー器データや実際のオペレーションで利用されている図面のデータになります。デジタルツイン上で再現された仮想空間において、個別の機器の状況を把握するために活用されます。
また、実際のオペレーションを想定すると機器のデータだけでなく、機器がいかに他の機器と接続されているかなどの図面データやその他オペレーションに活用されるデータが必要となります。
現場の撮影データと機器や図面データだけでは、実際にデジタルツインを作成することはできません。Google Mapを想像してみるとわかりやすいかもしれませんが、写真や地図などのデータと店舗名だけを把握していてもそれらが住所で関連性を紐づけられていなければ実際の場所に訪れることはできません。
そのように、撮影データと機器や図面データを紐づけるために関連性についてもデジタルツインでは付与しなければならないのです。
ちなみに、Cogniteではこの点に注目し、データの関連性を半自動で構築する機能をコンテキスト化と呼んで提供しています。
コンテキスト化について知りたい方はこちら:データの統合で欠かせない「コンテキスト化」とは?活用例も紹介!
では、デジタルツインの活用事例はどのようなものがあるのでしょうか?
ここでは、国が主導してデジタルツインを活用する事例と企業が構築したデジタルツイン事例に加え、Cogniteのお客様のデジタルツイン活用事例を紹介します。
日本の国土交通省は「PLATEAU(プラトー)」というプロジェクトによって3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化を進めています。
そして、そのデータはオープンデータであるために、誰もが利用でき、工事車両の交通シミュレーションや物流ドローンのフライトシミュレーションなどで活用されています。
シンガポールでは国家全てをデジタルツイン化する「バーチャル・シンガポール」を進めています。
シンガポールはご存じのように狭い国土に多くの人口を抱えており、開発が活発です。そのため、交通網の渋滞や建物の建設時の騒音が国家の課題となっています。
そのため、道路、ビル、住宅、公園などを全て3D化しデジタルツインで再現、デジタルツイン上で工事の際にいかに交通に影響があるかなどのシミュレーションを行っています。また、政府機関や省庁が同じデータを見ることで、連携しやすくすることも目的の一つとなっています。
インダストリー4.0の推進で有名なドイツの自動車会社、BMWでもデジタルツインの活用が進んでいます。
デジタルツインの概念は昔から同社でも存在していましたが、複雑な生産システムとさまざまなアプリケーションを活用していたために、データの互換性や活用までに時間がかかること、そして苦労してデータを集めたとしても最新のデータではないという課題を抱えていました。
そこで、ある企業が提供するプラットフォームを採用、常に最新のデータを活用しながら設計と企画、オペレーションチームがコラボレーションしながらシミュレーションなどを行えるようにしようとしています。
参考:BMWがNVIDIAと作るバーチャルファクトリー。世界中のスタッフが繋がって進化する次世代工場とは?
横河電機では、デジタルツインを活用して保守業務の効率化に取り組んでいます。
横河電機の甲府工場では、400枚程度の写真を撮影しフォトグラメトリー技術を活用、工場の3D化を行いました。そして、その3Dデータ上に運転に関する時系列データ、機器情報、過去の保守履歴、取扱説明書などを紐付けデジタルツインを構築しました。
この結果、現場の作業員はいつでも同じデータを参照できる遠隔地にいる専門家のアドバイスをえることができるようになりました。また、遠隔地から作業計画などの策定が可能となり、リモートワークの実現に貢献しています。
旭化成でも熟練作業員の退職など、人手不足と技能の承継に課題を抱えており、その解決策の1つとしてデジタルツインを活用しています。
具体的には、プラント建設時に作成した3DデータとP&ID図、DCSのセンサーデータなどを組み合わせてデジタルツインの作成を行いました。また、将来的にはARスマートグラスと組み合わせて、現場作業員への作業指示を出すなどの業務効率化を検討しています。
詳細はこちらから資料をご覧ください。
デジタルツインはIoTなどのテクノロジーの発展により、さらに注目をされるようになるでしょう。そして今までは不可能と考えられていた製造現場のリモートワークの実現や技能の継承などのメリットから、労働者人口が減っていくという多くの企業の抱える課題に対する1つのソリューションとなるかもしれません。
Cogniteでは、製造業の企業の方々に向けてデジタルツインを実現するデータ基盤を提供し、データ活用による業務の高度化を支援しています。上記の事例の他にも、デジタルツインを活用した事例やデモなどをご用意していますので、ご覧ください。また、製品のご案内などご興味のある方は下記よりお問い合わせください。
Cognite製品のデモはこちら:3Dモデルを活用したデジタルツイン