日本を含む世界中でますます電力利用が進んでいます。この発展は、再生可能エネルギーの消費量を増やしている産業によっても後押しされています。
エネルギー需要の増加に伴い、発電会社や電力会社は、水力や風力による発電方法を改善し、需要を満たすための配電方法を改善しようと懸命に取り組んでいます。
その一例がノルウェーの会社です。ノルウェーの送電システムを管理し、グリッド(送電網)の運用と維持、電力需給のバランスを取り、安定した信頼性の高い電力供給を確保する役割を担うStatnett社には、ここ数年、電力系統への接続を希望する産業施設からの申請が大幅に増加しています。場合によっては、新しい接続がもたらす負荷に対処するために、グリッドをアップグレードする必要があります。
どんなアップグレードが必要かということに関して効率的で信頼性の高い分析を行うために、Statnettのデータアナリストはデータに素早く簡単にアクセスする必要があります。しかし、現在では、分析を実行する前に、複数の異なるシステムに存在するデータを手動で収集したり、クリーニングしたりすることに多くの時間を費やしています。データへのアクセスを改善すれば、電力系統接続申請をより効率的に処理することができます。
グラフは、エリアに流入および流出する電力量の経時変化を示しています(出典:Statnett)
StatnettとCogniteは、電力システムの分野においてデータを効率的に処理するための研究開発で協力しています。変圧器や送電線などの電力網の装置の情報は、イベントデータや時系列データなどの異なるデータソースからの情報とともにCognite Data Fusion (CDF)に取り込まれます。電力グリッドはデジタルツインとして表現され、CIM標準(配送電業界の標準)に基づいてモデル化され、電力グリッドの電気的接続性を表現しています。利用者は、閲覧ツールやダッシュボードなどのフロントエンドアプリケーションを介して、体系的かつユーザーフレンドリーな方法でデータにアクセスすることができます。
Cogniteはまた、Pythonインターフェースを介したデータアクセスも提供しています。PythonはすでにStatnettではよく使われているツールで、組織全体のデータアナリストが利用していますが、私たちはこのインターフェースをさらに強力なものにするために、送電網に特化したさまざまな機能を追加しました。私たちはこれをPower SDKと呼んでいます。電力分野に特化したクエリを使用して、多くの異なるデータソースに同時に簡単にアクセスできるようになることで、多くのメリットが得られます。例えば、データアナリストは以下のことが可能です。
- 中間的な抽象化レベルの、データアナリストが理解できる専門言語でデータモデルをクエリ可能にすることで、より直感的で効果的な方法でCDFから時系列やイベントを取り出すことができます。
- データの抽出と処理にかかる時間を50%以上短縮します。
- 1日の研修を受けるだけで、SDKを使用して関心のある事象を分析し、答えを導き出すことができます。
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特定電力エリアのデータをフィルタリングし、装置、電圧レベル、電力負荷のクエリを実行します。
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電力エリアを定義し、変電所と送電経路を対応する電圧レベルとともにマップ上に表示します。
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グリッド全体を辿り、特定エリアの過去の負荷フローを見つけます。
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次回、同様のクエリや分析が必要になったときのために、保存や反復操作の実行を簡単に行えるようにして、他のアナリストと共有することができます。
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データを迅速に抽出・収集し、電力システム・シミュレーション・ツールに供給して、電力フロー・シミュレーションを実施します。
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イベントを使用して、過去の送電網の停止を調査します。
2つの異なるグリッド可視化の手法。ノードは変電所とその間の送電線を表します。
色は電圧レベルを示しています(出典:Statnett)
Power SDK を使うことで、ユーザーは今よりもはるかに速くデータを取得・分析し、品質保証を行うことができるようになります。簡単なプログラミング言語でコンテキスト化されたデータを利用できるようになるため、ユーザーは豊富なプログラミング経験がなくても、すぐに作業に取りかかることができます。このツールでは、情報を組み合わせて1つのノートブック上で概要を把握することが簡単に行えるため、より精緻な分析が可能になります。また、チャートやマップも用意されており、ユーザー間で簡単に共有することができます。さらに、SDKはオープンソースであるため、データサイエンティストやアナリストのコミュニティがノートブックや得られた知見を共有することができます。
Statnett は定期的に KSU (Kraftsystemutredning) や変圧器研究などの大規模な分析を行っており、容量や将来のニーズを計画し、送電網を最も効率的な方法で開発・運用するためのアクションを提案しています。Power SDKが利用できるようになったことで、次回の調査時には、再利用可能な高速なクエリにより時間を大幅に節約することができるでしょう。
「以前は1時間かけて情報を検索していましたが、今では5分で同じことができるようになりました。」
- Eivind Norum, Statnett
Power SDKを使い、より速く、より正確なグリッド解析を行うことで、電力系統申請プロセスのリードタイムが短縮されるため、世界中の重厚長大産業や発電・電力会社は、より早く系統に接続することが可能になります。これは顧客の収益向上につながり、電力会社は系統をより効率的に運用することが可能になります。
デジタルトランスフォーメーションは、電力会社と公益事業会社に非常に大きなメリットを提供することができます。データを活用して能力を最大限に発揮することで、企業は需要に応え、未来を切り開くことができます。