デジタルトランスフォーメーションを進める時、社内システム上で保有しているデータを活用することをは避けて通ることができない重要なポイントです。しかし、社内のシステムは部門によって管理者が異なったり、他部門のデータ提供を受けられないなど、いわゆるデータのサイロ化が原因となって、思うようにデジタルトランスフォーメーションが進まないというような声も聞かれています。
また、実際に経済産業省のデジタルトランスフォーメーションに向けた研究会がまとめた「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」でもレガシーシステムのデータ連携が困難という点が、DXの足かせの理由の一つとして挙げられています。*
参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~ P8本記事では、そのようなデータのサイロ化について、データのサイロ化とは?から発生の原因、そしてその問題点、解決の事例までを紹介します。
データのサイロ化という言葉をよく聞きますが、そもそもサイロとはどのようなものなのでしょうか?
サイロとは*、元々は飼料や農産物などを個別に貯蔵しておく容器または倉庫を指します。それぞれの容器や倉庫は単種類の物を保存するために、中身が分断され、連結していることはなく、中身の出し入れの際もそれぞれから個別に作業を実施します。
参考:「IT用語辞典 e-Words サイロ 【silo】 サイロ化 / サイロ型システム」このことから、情報システムなどのデータでも単体の利用目的を果たすために保存され、データが他のシステムと連携が取れていない分断された状態をデータのサイロ化と呼ぶようになりました。
では、全体最適を考慮すると合理的ではないデータのサイロ化はなぜ発生するのでしょうか?発生する原因は主に3つあります。
これは企業内の部署間で何をやっているのかわからない、他の部署がどのようなシステムを活用しているのか分からない、興味がないという状態が原因となったデータのサイロ化です。
もちろん、部署の役割や目標、専門性が明確になるというメリットがあるため、一概に悪い状態ということはできませんし、そのような組織形態をとったことも理由があるでしょう。
しかし、コミュニケーション不足や管理方法の違いによって、ノウハウや顧客情報の共有が行われず、データのサイロ化が発生してしまうことは機会損失につながっていると考えられるでしょう。
これは、社内で利用しているシステム間において、使用するデータの形式が異なるために発生するデータのサイロ化です。保守やセンサーデータ、ドキュメント管理など特定の業務を効率化する目的で個別最適に開発※され、システム間での互換性がないために、せっかくのデータが活用できない状態になってしまっています。
また、システムの管理者や運用部署、または作った時期が異なるために、同じ製造現場の機器のデータであっても、管理しているタグが一部だけ異なるために、システム間でデータを連携してもすぐに使うことができないといったこともあります。これもシステムが原因となったデータのサイロ化と言うことができるでしょう。
※参考:「デジタルトランスフォーメーションの河を渡る~DX推進指標診断後のアプローチ~ 第3章 デジタルトランスフォーメーションにおけるITシステム企画 2節 技術的負債の解消による投資確保」
こちらは石油化学や電力業界といった企業がしばしば直面している問題かもしれません。こういった業界では、高度経済成長期に建設された設備を40年以上にも渡って使い続けています。そのため、現場で人手によるアナログメーターの読み取りが必要となるなど、そもそもデジタルのデータ化することにも問題を抱えていることがあります。
さらに、プラントなどの設備では、多種多様なメーカーの設備を使用しているために、それぞれの設備データを合わせて利用したいけれど、各社で仕様が異なるために現実的には難しいということもあるでしょう。
では、データのサイロ化によってどのような問題・悪影響が引き起こされるのでしょうか?
ここでは3点に絞って解説します。
冒頭でもお話ししたように、昨今デジタルトランスフォーメーションが叫ばれています。
皆様の中にも、AIやIoTといったテーマでテクノロジーの活用を進められている方もいらっしゃるでしょう。そして皆様がご存知のように、AIやIoTの根幹はデータの活用です。
データのサイロ化によって、AIのトレーニングに活用できるデータが限られてしまう、IoTで取り込んだデータを他のシステムのデータと連携できないといった問題が発生すると、せっかくテクノロジーの活用に取り組んでも、ビジネス上の効果を生み出すことができません。
データのサイロ化によって、社内のリソースを有効活用することも阻害しているかもしれません。例えば、ある調査※ではデータ活用担当者の作業の90%がデータの整備に消費されているという結果が出ています。
最先端のデータに関連するソリューションの開発や導入を決定した際にも、既存のシステムのデータを統合することが必要となり、有限のリソースを本来の目的とは異なりデータの正規化や統合に費やすことになってしまうこともあるのです。
デジタルトランスフォーメーションが注目されて以降、多くの企業では様々なテクノロジー活用のためにPoCの実施などに取り組んでいます。しかし、データがサイロ化していると、PoCが成功したとしても本格的に社内展開する際に障壁となるかもしれません。
データのサイロ化が原因で、ソリューションの本格導入の際にはサイロを解消する環境の構築が必要になったり、改善・修正のたびにその環境の修正も必要になるなどの手間が発生します。
その結果、構築の負荷やソリューションの改善が間に合わず、導入したソリューションが活用されない、PoCで想定されたビジネス効果を生み出すことができないなど、本格的な社内展開を阻害する可能性*があります。
*参考:デル・テクノロジーズ社「DIGITAL TRANSFORMATION INDEX 2020, 4 | BARRIERS TO TRANSFORMATION」
では、データのサイロ化はどのように解消すれば良いのでしょうか?
Cogniteでは、容易には変更できない既存のシステムを利用しつつも、素早くデータ活用を可能にするために新たなデータ基盤を整備することを推奨しています。
ここでは、新しいデータ基盤に求められる要件とCogniteが提供するデータ基盤Cognite Data Fusionの機能、そして実際の活用事例を紹介します。
データのサイロ化に対応するためには、現場の画像やPDFなどの図面、マニュアルなどのドキュメント、3Dデータといった多種多様な形式のデータに対応していなければなりません。
また、データを投入して構築するDWHとは異なり、データを活用する人が誰でもデータを活用できるように、データ基盤上でデータの関連性を付与できる機能も必要でしょう。
Cognite Data Fusionでは、そのような多様なデータの統合にも対応し、独自のコンテキスト化技術によってそれぞれの関連付けを行います。
その結果、分断されていたデータ間の関連性が構築でき、図面データから実際の機器データを見たり、3Dデータから機器のマニュアルを確認したりといった業務のデジタル化にも貢献し、データのサイロ化状態を解決します。
Cogniteの提供するコンテキスト化についてはこちらのデモをご覧ください
新しいデータ基盤を構築する際は、既存のシステムのデータを取り込むことと、取り込んで関連付けしたデータを他システムやAIのソリューションへ受け渡す双方向の連携・オープン性を検討しなければなりません。
せっかく新しいデータ基盤を構築しても、他のシステムと連携できなければただの新しいサイロが出来上がってしまうだけなのです。
Cognite Data Fusionは既存のDBや時系列データからデータを取り込むことを簡略化するために、Extractorというプログラムを提供しています。
また、お客様のご利用の環境によって対応できない場合は、マニュアルでの取り込みや、Pythonを用いて個別に対応するなど、柔軟な対応を可能としています。
また、Cognite Data Fusion上のデータを受け渡す際も、APIやCogniteが提供するSDKですでに関連性が構築されたデータにアクセス可能となります。
パンデミックの影響により、製造業で製造現場を持つ企業ではいかに現場の作業を遠隔監視などに切り替えるか検討されたことでしょう。その際に、クラウド上にデータを集約・保存していれば、製造現場の外からも必要なデータにアクセスできるようになり、保全計画の策定や設備監視業務などではリモートワークの実現が可能となります。
その他にも、データのサイロ化が解消された場合、数千もの設備に対して活用できるデータの量はTB級になることでしょう。大規模なデータを高速に処理するためには、状況時応じてリソースを活用できるクラウドの利便性が必要となります。
Cognite Data FusionはGCPとAzureのいずれかに構築可能なSaaS製品として提供されています。そのため、利用しているお客様はインターネット経由にて遠隔地にある製造現場のデータへいつでもアクセス可能となります。また、膨大なデータに対してもクラウドを活用することで高速処理による軽快な操作を実現しています。
3Dデータを用いたデジタルツインのデモで操作性をご覧ください
また、クラウド上にデータを置くことに対するセキュリティの懸念に対しても、20名上の体制で自社のセキュリティチームが最先端の研究をおこなっています。そして、BP社やSaudi Aramco社といったセキュリティに厳格なオイルメジャー企業にも導入されており、リスク評価も適合済みとなっています。
ここでは、新しいデータ基盤を利用してシステムが原因のデータのサイロ化を解消した企業の事例を紹介します。
機械の稼働データや業務指示などを別々のシステムで管理しており、それらを統合してダッシュボードに集約、業務の効率化を行ったノルウェーの製造業Aarbakke社の事例です。
Aarbakke社は機械の稼働データや業務指示の記録を複数の独立したシステムにて保有していました。
そして、各システムは互いに連携していない、データがサイロ化された状態でした。そのため、最適な生産プロセスの分析や機械の稼働・パフォーマンス状況について把握することに問題を抱えていました。
Aarbakke社はCogniteの提供するデータ基盤、Cognite Data Fusionを採用し、機械の稼働データや業務指示などを統合しました。
また、データを統合するだけでなく、稼働状況などを容易に把握できるようにダッシュボードを作成、最も使用されている機械の情報や加工している素材の情報、機械のアラート情報などを確認できるようにしました。
Aarbakke社はダッシュボードを使用することで機械の過去の稼働データとそのパフォーマンスを分析、切削に利用する機械の使用を最適化、切削時間を短縮しました。
その結果、Aarbakke社は機械の効率を10%向上させることに成功しています。
また、アラートと合わせて機器状況もダッシュボードで確認できるようになったことで、予期せぬダウンタイムの発生を抑えつつ、サービスコストの削減にも繋げようとしています。
今回は、データのサイロ化とはから、データのサイロ化が起きる原因、その問題点、解決方法を解説しました。
データのサイロ化が起きる原因は様々です。AI・IoTの活用といったデータ活用によるデジタルトランスフォーメーションの実現を阻害するデータのサイロ化は解消しなければなりません。
そして、Cogniteでは新しいデータ基盤を構築し、今までに分断されていたデータ間の関連性を構築することで、お客様がデータ活用の実現を達成できると考えています。
実際に、日本においても旭化成様がプラント建設時の3Dデータを活用できていない点に注目し、3Dデータを用いたデジタルツインの構築とスマート保安の実現に取り組まれています。
皆様も、新たなデータ基盤によってデータのサイロ化を解消し、データの活用を実現へ取り組みましょう。