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富士石油、バーチャルリファイナリー
構築の実現に向け
Cognite Data Fusion®︎を導入

富士石油はCognite Data Fusionを導入し、技術情報の収集にかかる時間を年間2,300時間削減
することで、業務効率の大幅な向上を実現しました。

富士石油は、東京都品川区に本社を置き、千葉県袖ケ浦市に製油所を構える石油精製専業の会社である。1964年に創立され、1968年より袖ケ浦製油所の操業を開始して以来、一貫して石油の精製と石油製品の販売などを手掛けており、大消費地首都圏のくらしと産業を支えるエネルギー供給の重要な役割を担っている。

左: 高橋氏、左: 西村氏

左: 技術部 技術企画課長 髙橋 秀明氏
右: 技術部 技術企画課 西村 卓也氏

同社は第三次中期事業計画における重点課題として「製油所装置の稼働信頼性の維持・強化」、「コスト競争力の強化、競争優位の確立」、「製油所の徹底した環境負荷低減」、「脱炭素ビジネスの追求」の4つを上げ、デジタル技術を最大限活用した操業の高度化を目指す。同社技術部の技術企画課はデジタル推進の中核を担い、テクノロジーの導入検討と実装、その後の活用推進を行っている。日本社会における労働者人口の減少は、石油業界にとっても喫緊の課題である。将来に起こり得る更なるエンジニア不足を補うため、デジタル技術による業務の効率化によって中長期的なリソースの確保と創出を行う必要がある。富士石油においても、運転・保全・技術部門のエンジニアの若年化課題は顕在化していたが課題解決の具体案の検討と実行には長い時間を要していた。

そこで、技術企画課はまず運転・保全・技術部門のエンジニアの仕事内容を調査し、業務の棚卸しを行った。すると、いずれの部署においても技術資料の収集に非常に多くの時間を要していることが判明した。特に運転部門、技術部門、保全部門が使う技術情報の調査には時間かかっていた。操業開始から約50年。設備増強と修繕が継続的に行われてきた装置の図面は膨大な数にのぼる。装置の一部は既存のシステムで統合されていたものの、全ての図面が集約して管理されているわけではなかった。エンジニアが保全計画を策定する際に、特定の図面が保管されている現場を訪れてファイルを探すことも少なくなく、リソースが限られている中で、通常業務を進めるプロセスに時間を取られていることはエンジニアの生産性を向上する上で、大きな課題だった。
エンジニアが費やす資料収集やデータ検索等の時間を年間の総時間数に換算すると、1万時間以上と推定される。デジタル化によってデータを一元化し、必要なデータに直接アクセスできるようになれば、資料収集時間を削減でき、大きな業務効率化に繋がる。

CDF導入決定の決め手は、実データで動くデモ

技術企画課は、技術情報基盤ソフトウェアの導入を目指してベンダー候補各社と打合せを重ねた。デジタル化を加速させるためには、これまでに行ってきた施策やシステムを最大限に活用する必要がある。ベンダー選定においては「既存システム上の各装置のPFD(プロセスフローダイアグラム)やP&ID(配管計装図)のデータとスムーズな連携ができるかどうか」がポイントであった。一部のPFD、P&IDは既に各装置で実務に使えるレベルでの収集、集約はできていたが、既存のリソースやソリューションを使って、時間をかけずに様々な情報連携が容易にできるかどうかは中期事業計画を実現するスピードに影響する。
Cogniteからの提案は、予想以上に具体的なものだった。Cognite Data Fusion®︎(CDF)がExtractorやAPIなどによってあらゆるデータと柔軟な連携ができ、既存システムを大いに活用できることは聞いていたが、実際の技術資料の一部をCogniteに渡すと、1週間足らずでデータの紐付けとコンテキスト化 が完了したCDFのデモ環境を見ることができた。手作業で1つ1つのデータを紐付けしていたら数ヶ月はかかるであろう作業が、想像していたよりもはるかに早いスピードで且つ精度高くコンテキスト化されたことを目の当たりにして、スモールスタートでプロジェクトを早期開始すれば、業務効率化の成果に直結することが確信に変わった。

2023年3月に社内での導入が正式に決定し、同年5月にはプロジェクトを開始した。出来るだけ早く、スムーズな実装を進め成果に繋げるために、まずは特定の装置を対象にモデルケースを作るPhase1と、大規模実装を行うPhase2の2つにプロジェクトを分けた。初期導入にあたるPhase1では、製油所全装置の約1/4の数に相当する11装置を対象にCDFを導入。効果を最大化するため、また、社内で実際にCDFを利用するユーザーからのフィードバックを得やすいように業務利用率が特に高い主要装置を対象とするスモールスタートとした。実装にかかった期間はわずか6ヶ月。想定していた期間の約半分であった。

「Cogniteからは富士石油の考える構想を具現化する的確な提案が短時間であがってきた。費用のみでなく、導入までのプロジェクト期間の短さ、導入後の保守管理を含むアフターフォロー体制も意思決定の大きな後押しとなった。また、コンテキスト化という革新的なテクノロジーを駆使し、当社で想定していた約半分の期間である6ヶ月という短期間でPahse1の構築を終えられたことに感銘を受けた。」(髙橋氏)

現在まで、社内の評価は良好。活用部署からは「早く製油所全装置を対象に導入してほしい」との声が多く上がってきたため、Phase1から間を空けることなくPhase2として2024年5月から製油所全装置を対象にしたCDFの導入を進めている。

「これまで様々なシステムで煩雑かつ各部署に依存し管理していた資料を、CDFのトップ画面と連携したP&IDから即座に入手することが可能となった。技術部では、製油所の省エネ・収益改善案件の抽出会議を行うことが多々ある。議論の中では、多くの機器の設計情報や図面・データシートの確認が何回も必要となるが、CDFを使うことで資料検索時間が大幅に削減され、それによって会議の効率化と意思決定までのスピード向上が実際に効果として出始めている。」(西村氏)

また、操業の管理においては、CDF上でデータをリアルタイムで可視化し、ユーザーが簡単に時系列データを分析・モニタリングできるChartsの機能を製油所装置の運転管理に活用している。

導入の成果

富士石油では、11装置を対象としたCDF導入のPhase1の成果として、約2300時間/年の情報検索時間が削減された。全装置へのCDF導入を進めるPhase2では、少なくとも約7900時間/年の情報検索時間の削減を見込んでいる。また、技術部では、CDF導入により創出された時間を製油所装置の運転管理や省エネ・収益改善検討、新規事業検討等の他の重要な検討に費やすことが可能となり、操業の高度化につながっている。
将来的には、これら数値に含まれない操業管理の高度化や、VRの活用による業務時間の更なる削減での改善成果を目指している。特に、VRの活用によって現場作業の低減による働き方改革(環境の改善)や安全衛生上の効果も見込んでいる。

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CDFデータ連携のイメージ図

バーチャルリファイナリー構築の実現に向けて

これまでのプロジェクトでは、Phase1として製油所操業装置の主要な装置を対象として約1/4の装置群への導入を完了し、既に実務における利用を開始している。2024年度中には、Phase2として残りの装置群への導入を完了予定であり、これによって製油所操業の装置群の情報基盤連携が完了する見込みだ。
Phase2の完了によって目指すべき製油所操業の高度化に向けた基盤ソリューションが整備され、同社では全装置における実業務での本格的な活用を見込んでいる。さらに、富士石油はCogniteを活用して装置群のVR空間の構築に着手し、1装置でPoCを進めている。CDFとVR空間とを統合することによる相乗効果を期待し、製油所装置群への拡大、更なる業務の効率化、保安力向上、意思決定スピードの向上に繋げていきたいと考えている。また、将来的にはVR空間とロボットを統合利用することで現場作業の更なる省力化を図りつつ、製油所操業に係る各部署のエンジニアが、操業上重要なデータ・情報をセキュリティを担保しながら誰もがどこからでも速やかに取得できることを目指し、組織一体での生産性の一層の向上を目指す。

社内推進メンバーは、「CDFとVRの併用は、これまで製造業で長年未解決となっていた操業上の様々な課題を解決する大きな可能性を秘めている。Cogniteとの更なる連携によってバーチャルリファイナリーを構築したい」という構想の実現に向け、熱意を持ってプロジェクトを推進中だ。

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