本ブログ記事のポイント:
- 製造業の現場ではMESと製造業向けDataOpsは区別して検討すべきで、どちらも重要である
- 信頼のおけるデジタルソリューションを維持するための隠れたコストを過小評価しない
- 製造業向けDataOpsを活用することでいち早くデジタル化の便益を手に入れることができる
製造業向けソフトウェアをとりまく状況は変化しています。 従来のソフトウェア製品は機能を拡張し、当初対象としていた範囲以外の機能も提供しています。例えば、ERPは資産管理モジュールをサポートするためにプロセスデータを、ヒストリアンは高度な分析を行うためにアセットデータを必要としています。一方で、生産工程で生成されるデータの量は指数関数的に増加しています。国際的な市場調査会社IDCによると、データ量はむこう5年で3倍になるといわれています。
こちらも読む: DataOps - データに対する投資対効果の変革をもたらす新しいアプローチこれらの変化によって、データを活用して競争力の維持やサステナビリティに対応しようとしている製造業の企業はソフトウェアの選択が難しくなっています。
Cogniteは、製造業向けDataOpsプラットフォームCognite Data Fusionで、企業がデータからより多くの価値を得て、デジタル化の取り組みを達成することを支援しています。そこで、製造業のお客様とデジタルトランスフォーメーションの話をすると、「すでにMES(Manufacturing Execution System、製造実行システム)を導入しています。なぜ、追加で製造業向けDataOpsプラットフォームが必要なのでしょうか?」と聞かれることがあります。
この疑問は、先述の通り、製造業向けソフトウェアの提供する機能が増え、できることとできないことが曖昧になっていることを表しています。この疑問は、製造業向けDataOpsを導入すべきユースケースを理解することで解消できます。
その答えはデータと関係しています。OTデータの量とデータソースの数は、データを活用するよりもはるかに速いペースで増加しています。実際、2025年までには生成されたデータの30%しか十分に活用されません。使われなかったデータは、企業に対して洞察も価値も作り出すことはできません。
IDCのレポートを読む 産業向けDataOps:エンジニアによる大規模なデータ操作を可能にするIoT最適化データ
データ活用の最初のステップはデータの統合で、プロセス機器、SCADA、ERPシステムとすでにつながれているMESを中心にシステムを構築するのは理にかなっているように思えるかもしれません。しかし、データを統合するだけでは大きな価値は生まれません。データの統合はインサイトを生み出すアプリケーションの開発の最初のステップにすぎません。一方、製造業向けDataOpsは、組織内でのインサイトの活用を容易にするための価値創造プロセスに一貫して対応します。下記でそのプロセスをご紹介します。
価値創造とデータ活用の各ステップ:
データの統合 |
製造業向けDataOpsにおける統合は、オープン性によってすでに統合されたシステムも活用することができるという点で区別されます。 製造業向けDataOpsはOPC UAといったオープンプロトコルを含む柔軟なデータ統合パターンをサポートしていて、ソフトウェア開発キット(SDK)やオープンなAPIを提供しています。その理由は、データの統合にて必要となる作業を最小限にし、すでに存在するMRS、Azure Data Lakeなどを含むシステムをSDKやAPIによって連携・活用するためです。これにより、製造業の企業は後続のデータ活用プロセスのより価値ある段階にすばやく移れます。
こちらも読む: DataOpsで業界の専門家とプロのデータサイエンティストにコンテキスト化されたデータを提供
コンテキスト化(データの関連付け) |
コンテキスト化によって、データは検索可能かつ利用可能になります。たとえばある設備である「Pump-202」に関連したP&IDを探すとしましょう。コンテキスト化によって、正しいドキュメントだけでなく、リアルタイムのプロセスデータやセンサーデータ、未処理の作業指示、メンテナンス文書も一箇所にまとめて取得できるようになります。データを検索できるようになると、アプリケーションの開発が加速し、価値を生み出すまでの時間が短くなります。
こちらも読む: データのコンテキスト化でユースケースをスケールさせる方法
また、自動的なコンテキスト化は、製造業向けDataOpsを差別化する鍵となっています。ほかのソフトウェアもなんらかの形でデータをコンテキスト化する機能を提供しますが、多くの場合手動でデータをコンテキスト化する必要があります。製造業向けDataOpsのソリューションでは、機械学習(ML、Machine Learning)サービスで一度設定すると自動的にデータをコンテキスト化し、コンテキストの構築や関係性のメンテナンスは15-20倍効率化されます。さらに、製造業向けDataOpsが生成したコンテキスト化モデルは、データソースが増えれば増えるほど成長するように設計されています。
トランスミッタとアセットからのライブプロセスデータでコンテキスト化されたP&IDの一例
アプリケーション開発 |
多くのMESは、新しいアプリケーションの開発にあたってシステムインテグレータやサードパーティーを頼りにするため、プロジェクトにかかる時間とコストが増えがちです。製造業向けDataOpsを利用することでデータ活用の専門知識を社内にたくわえ、企業の抱える課題を解決したいという企業のニーズにこたえるアプリケーションに必要なデータを提供可能になります。効果的なMESにすぐに必要なものではありませんが、生産最適化のためのハイブリッドAIと呼ばれる物理ベースの機械学習など、産業用DataOpsはより複雑な分析を必要とするアプリケーション開発も可能にします。
メンテナンス |
アプリケーション開発は、データ活用の最終段階だと考えられていますが、ソリューションの信頼性の維持や担保についても検討する必要があります。複数のデータソースの情報をコンテキスト化したデータは、個別のソリューションやユースケースをメンテナンスするのに必要なリソースを大幅に減らします。製造業向けDataOpsではデータ品質の監視も行い、意思決定に使われるデータが監査可能で信頼のおけるものであることを保証します。データ品質の監視を行わずに構築された分析モデルでは、検証に数時間かかり、いくつかの誤判定を経て、ソリューションが信頼性に欠けると判断され、ユーザーに利用されなくなることでしょう。
MESと製造業向けDataOpsは下の図のように対応するユースケースが重複することがもちろんあります。しかし、重要な相違点は、重複しないユースケースに対応できるかです。MESは原材料を最終製品に仕上げる工程をサポートするために作られたもので、スマートマニュファクチャリングを可能にする鍵となるテクノロジーです。一方で、製造業向けDataOpsは、コンテキスト化されたデータによって企業が生産最適化や、サステナビリティ、施設の遠隔監視、品質管理など、さまざまなユースケースで横断的にデータを利用可能なものにするのです。
製造工程で生成されるデータは増える一方です。 そこで、製造業向けDataOpsは、運用・制御データ分析のライフサイクル全体を持続させるだけでなく、データの価値、品質、予測可能性、規模を改善します。また、IDCの調査によると、60%の企業が2023年までに製造業向けDataOpsソリューションを導入し始めるといいます。このことから、今必要な措置を講じてデータ活用プロセスを合理化した企業は、他社よりもいち早く競争力を高めることができることでしょう。
Cogniteについて
Cogniteは、2016年にノルウェーで設立され、世界中の製造業や石油ガス、電力などの重厚長大産業の本格的なデジタルトランスフォーメーションをサポートするグローバルな産業用SaaS企業です。主要製品であるCognite Data Fusion (CDF)は、OT/ITデータの民主化とコンテキスト化を通じて、安全性、持続可能性、効率性を向上させ、収益を向上させる産業用アプリケーションを推進します。Cognite株式会社は、Cognite AS(ノルウェー)の100%出資子会社として2019年11月に設立され、Cogniteの主力製品となるCognite Data Fusion(CDF)の国内における販売、マーケティング、およびサポート拠点となっております。